タイ人のホラさんと僕の姉マミヤ › 短編 › 姉は、ホラさんに恋をしていたのだ

2015年12月03日

姉は、ホラさんに恋をしていたのだ

ムエタイ

「家族って、お兄さんは、本当のムエタイ選手なんだから、仕送りの必要ないんじゃないの?」
姉の質問を半分くらい理解して、ホラさんは、僕に言った。
「マミヤに、ごめんなさい。ボクには、タイに奥さんと子供がいるのです」
はぁぁぁ!!??という、姉の感嘆の声が僕の心の中に響いた。そうなのだ、姉は、少なからず、ホラさんに恋をしていたのだ。
が、プライドの高い、マミヤ兄貴は、一呼吸置くと、フッと笑った。
「そんなの知ってるよ。とっととタイに帰って、家族のために仕事見つけな」
今度は、僕の心が悲鳴を上げた。姉よ、それは、悲しかろ?本当に彼氏がいないのはアナタの方じゃないんですか?
しかし姉は全く憂いの様子は見せず、缶ビールを飲み干すと、「さぁ、帰るぞ、良博」と行って、あばよ、とホラさんに手を振った。

が、家に帰ると、姉は、バタンと倒れこんだ。
僕は今日も姉がお気に入りのエバーカラーワンデーをしていることを知っていたので、姉をゆり起す。
「化粧はともかく、カラコンは外したほうがいいって」
姉がどんな思いで、キラキラ瞳で、ホラさんに会っていたのかと思うと、弟ながら、涙を禁じえない。
が、姉は、固く目をつむり、僕の言葉には耳を貸さない。コンタクトの中でも、かなり安全性が高いカラコンだと聞いているので、僕は、姉をリビングに残したまま、部屋へ戻ろうとする。
その時、姉の目から、ポロリと涙がこぼれた。僕が思わず息を飲むと、姉は目をつむったままつぶやいた。
「・・・まだいたのか、早く寝ろ」
僕は何も言わず、そっとリビングを後にした。たぶん、酔っぱらった姉は全てをなかったことにしたいのだと思って。ホラさんに惚れていた姉、勘違いしていた姉、弟を呼びつけてまで、ホラさんの今後を語りたかった姉。かわいい人だな、といつも思う。
なのに、どうしていつも空振りで終わるんだろう? 外人ターゲットという歪んだ価値観が悪いのだろうか?
僕は、歯を磨いて、もう一度、リビングをのぞく。
そこにはソファに、大の字になって、豪快にいびきをかいて寝ている姉の姿があった。
・・・外人とか、関係なさそうだ、と僕は笑ってしまう。いや、逆に姉の彼氏や結婚相手は外人の方がいいのかもしれない。日本男児に、あの豪快な寝姿を受け入れられるだろうかと思うと、姉の本能的な判断は正しいのかもしれない。
僕の姉、マミヤ兄貴の武勇伝は、尽きない。



同じカテゴリー(短編)の記事画像
コンビニの前で、たむろ
お風呂上がりのシャンプーの匂い
年がら年中、外人の彼氏や友達とつるんでいる
同じカテゴリー(短編)の記事
 コンビニの前で、たむろ (2015-11-30 11:15)
 お風呂上がりのシャンプーの匂い (2015-11-27 11:05)
 年がら年中、外人の彼氏や友達とつるんでいる (2015-11-24 11:35)

Posted by 弘せりえ 2015mar at 11:25│Comments(0)短編
上の画像に書かれている文字を入力して下さい
 
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。